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川崎重工の未来を創る、技術開発本部のお仕事とは 川崎重工の未来を創る、技術開発本部のお仕事とは

(2017.1.26更新)川崎重工業株式会社 技術開発本部 システム技術開発センター 副センター長 兼 ICTシステム開発部長 理事 才木昭義様
インタビュー
才木昭義様

川崎重工業株式会社 技術開発本部 システム技術開発センター 副センター長 兼 ICTシステム開発部長 理事 才木昭義様

―― 技術開発本部について教えてください。


川崎重工には、船舶海洋、車両、航空宇宙、ガスタービン・機械、プラント・環境、モーターサイクル&エンジン、精密機械の7つのカンパニーがありますが、それぞれが異なる市場の中で新しい価値を創造するために、精力的に研究開発に取り組んでいます。 技術開発本部は、各カンパニーを全方位的に見る立場にあります。特に重要な新製品開発プロジェクトにおいて、各カンパニーと密接に連携し保有する高度な基盤技術を駆使して、直面する技術課題を克服し、イノベーションを実現することにより、早期の目標完遂に取り組んでいます。


―― 才木様の部隊はICTとなっておられますが、IoTも統括してみておられますよね。 モノとインターネットの融合はさらに加速していくと思われますが、御社が目指しておられる将来像はどのようなものでしょうか。


ICT、エレクトロニクス、ソフトウェアと言葉は変わっていますが、電子回路を自分で組み立ててソフトウェアを作って…という技術は私が入社した30年前からありますね。最近言われているAIやIoTについても、実は昔からやっていて、アピールが遅かったくらいです。 モノとインターネットの融合としては、工場の中では様々な設備が自動化されて、ロボットが人間の隣で同じ作業をする、というような将来像は常に描いています。実際は既にロボットが人間の作業を行っている部分もあるのですが、工場の中なのでまだ一般の方々の目には留まらないですね。
IoTが注目され始めているのは、インフラの整備が整ってきた側面もありますね。データのデジタル化はもちろん、モバイル通信はコストが安くなって、データを貯めやすくなっています。そういった時流に乗った開発は我々も行っており、明石には既にデータセンターがありますし、ビックデータ解析をしているカンパニーもあります。例えば、船舶の最適航路計画支援システムの開発も行っていますが、燃費向上のため低気圧を避けたり海流を計算するなど、自動車より難しい部分も一部あります。


―― 御社の場合は、ハードを売りながら保守や運用サポートもされていますが 今後はそれに加えてサービスで付加価値を付けていくイメージですか?


製品によって異なりますが、今はデータの活用という意味では、ガスタービンや鉄道車両台車のIoT化に注力しています。故障せず、長く安定的に稼働するものをお客様に納品しながら、同時にコストを下げたい。そのためには機能の性能をよくするだけでなく、常に状況を見ながらマシンの状態を最適に保つ必要がありこの部分で大量のデータを活用しようとしています。
モーターサイクルでは、ライダーの話す言葉から、意志や感情を感じ取り、言語を通じて意思疎通するということを考えています。まだ手探りな部分もありますが、ハードウェアをしっかりつくることは大前提として、モーターサイクルが人格を持つことで新たなライディング体験や感動を提供したいですね。


―― これからはデータの解析や活用のアルゴリズムを作れる方が求められるのでしょうか?


扱うモノはあくまで機械なので、機械を理解したうえで情報処理をする必要があります。機械と情報処理の両方に興味を持ち、ITの知見をモノづくりに活かせる方に注目しています。モノには必ず通信が絡みますので、通信システムを含めて広い範囲を見られる、そのような方を求めています。ソフトウェアを作れることよりも、システムの規模感がわかる方や、データ活用の流れを設計できるという人の方が向いているかもしれません。部内にはそういう人も多いですし、そもそも部のメンバーは機械系・情報系と明確に分かれてはおらず、オーバーラップしていますね。適材適所の配置にはしたいですが、ある程度幅をもって何でもやる姿勢が求められます。モーターサイクルや船、ガスタービンなど色々なことに興味を持って頂きたいですね。



―― IoTに関しては各社手探りの中で、まず何を目指すのかをこれから決めて取り掛かる、というイメージでしょうか。


ガスタービンは既にサービスを行っているため、やることが明らかです。ロボットでも以前から一部でサービスをしておりますが更に付加価値を高めたり、モーターサイクルでのサービスとなると、新しいことを考えていかなければならない。先ほど言った喋るバイクについて言えば、まずバイクの情報を見える化して、ただライダーがそれを見たら危ないので喋るようにしよう、次はライダーの声を認識してコミュニケーションをしたい、など、テーマを練りながら企画しています。ビジネスとして確立しながら一方で新しい「コト」を作っていく両方が弊社にはありますね。


―― IoT、ICT絡みのサービスは他社でも最近増えています。 その中で御社の魅力や、御社でこそできることはどんなところでしょうか。


扱っている製品が幅広いことですね。各製品を見て、横串を通すような仕事に興味があり、色んなことをやりたいという方であれば技術開発本部は非常に面白いと思いますね。単なる研究所ではなく、各カンパニーと密接に連携しており、カンパニーに対して技術開発本部として提案も行っている点が、他社にはない特徴だと思います。 例えば去年まではロボットのIoT化に携わった方が、今年はガスタービンに関わっているなど、他社ではなかなかない光景だと思います。


―― 最近シリコンバレーに拠点を出されていていましたが、どのような意図があるのでしょうか。


情報収集的な意味合いもありますが、トップからは実際のシリコンバレーではどんなことが起こっているのか、 川崎重工がグローバルに加速していくためにその空気を持って帰ってくれ、と言われていますね。駐在員が2名ですので、まだ手探りの状況ではありますが他社に先駆けてできている部分はあるかな、と思います。 また各カンパニーからも調査の要望はあがっています。ロボットについては、ロボットビジネスセンターはシリコンバレーに子会社があり、拠点を持って活動しています。本社としてもそことシナジーを生みながらやっていくつもりです。


―― 実際に御社の中で稼働しておられるようなICT絡みのシステム事例ってどんなものがありますか。


例えば電車であれば、状態監視、台車の振動をモニターする。ロボットが故障したらメールで送るとか。 最近は航空機生産の自動化を進めようとしています。航空機は職人さんの手作業によるところも大きいため、職人さんがどのようにやっているかを分析して無駄がないか、効率が悪い所はどこかという解析も含め、自動化を進めています。生産の効率化や無駄の排除は昔から取り組んでいますが、最近はそこにIoT(MES)の技術を取り込んでいこうという流れになっていますね。


才木昭義様
才木昭義様


―― 色々なテーマに幅広く携わっておられますが、それを30名程の少数精鋭でやられているのですよね。


専門部隊として30名程度集めてはいますが、実際にはそれぞれチームを組んでやっていますね。例えばガスタービンであれば技術開発本部だけでなく、ガスタービンビジネスセンターの技術研究職と協力してやっていますし、最近はICTが注目されているのでその人材が多いですがカンパニーとやるときは専門の人材を集めて行っていますね。



―― 技術開発本部にはどのようなキャリアを歩んでおられる方が多いのでしょうか。


最初から技術開発本部配属の生え抜きが多いですね。場合によってはカンパニーに一時的に出向して、向こうに入り込んで業務をしてから戻ってきたり、その逆もあります。そういう意味では柔軟性のある人が多いですね。これしかできません、という姿勢では辛いです。全くしたことがない領域でもなければ、いつもコミュニケーションをしますので机の場所が変わったくらいの感覚です。カンパニーのことをよく理解するために、このような関係を保ちながらやっています。在職中に大学との共同研究を行ったり、論文を書いて博士号を取る人もいますよ。いくつになっても勉強しながらやっていける環境はあります。製品の幅が広いので、広い所に興味を持って、自分の技術をそこで活かしたいと思っている人にとっては非常に面白い職場だと思いますね。


―― 5,10年後に具体的にこんなものが世の中にでるだろう、といった製品や企画はございますか。


製品はほぼ決まっていますので、それをどのように広げて新しいビジネスを考えていくか、アイディア勝負な所もあります。今であれば、電気・ガスが自由化されている中で我々がどのように(ビジネスを)展開させていくかを、研究開発部門ではありますが、推進していきたいと考えています。
今後はエネルギーシステムの販売を拡大するとともに、これに付随するサービスとして、川重の製品は使いやすい、サービスがきめ細かい、売上向上に貢献した、とお客様に言って頂けるような提案を、時流に合わせて行っていくつもりです。完成されたものを「これどうですか?」と渡すのではなく、「こんなものはどうでしょう?」と提案として、お客様と一緒に作り上げるスタイルでやりたいですね。


―― 実際に才木様がやって来られた中でこの仕事は面白かったなというものはありますか。


関西国際空港のバゲージハンドリングシステムですね。初めての長期プロジェクトで、空港島が開港する前に、毎日船で通ってシステムを立ち上げました。チェックイン時に荷物を預けたら、国際線であれば4階のカウンターから地上まで、全てコンベアで運ばれるんです。荷物が紛失しないように監視をするのですが、その監視システムの通信系についてカンパニーの方から手伝ってほしいと要請を受けて、私が行きました。NECさんとの共同開発で、現場で一緒に作業していましたね。私は後半からの参加でしたが、カンパニーの人はすごく大変だったと思います。神戸工場の中にコンベアシステムを仮設して、荷物を流すのですがそのためにたくさんの荷物が必要だから、鞄やスーツケースをかき集めました。(笑)チェックインカウンターの所にKawasakiと書いてあるから見てみてください。そのシステムは今でもずっと使われていて、子どもに「これお父さんが作ったんだよ」と言えるのは良いですよね。


―― やはりそういう夢が御社にはありますよね。


車両なんかもそうかもしれないですよね。電車にのったら川崎重工って書いてありますから そういうのが楽しくて面白いですよね。
将来的には、良い意味で黒子のようになれたらな、と思っています。「こんなところにも川重が入っていたのか」と驚かれるような。バゲージハンドリングシステムもそうですが、ハードを提供しながら、そこにサービスもプラスするという形でやりたいですね。複数の製品を手掛け、複数のお客様に提供している我々だからこそ見えるものがあって、お客様自身も気付いていないようなサービスを提供できる可能性もあります。現状満足しているかもしれないけれど、こんなやり方もありますよ、と「あ!」と言われるような提案をしていきたいですね。


―― 本日は、貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございました。