タイズマガジン関西

社会貢献につながるガスエンジン開発!その設計に求められる能力とは 社会貢献につながるガスエンジン開発!その設計に求められる能力とは

(2017.4.19更新)川崎重工株式会社 ガスタービン・機械カンパニー 機械ビジネスセンター エネルギー本部 技術総括部 発電4サイクル技術部 部長 酒井 能成様 主事 福島 道雄様
インタビュー
インタビュー中

川崎重工株式会社 ガスタービン・機械カンパニー 機械ビジネスセンター エネルギー本部 技術総括部 発電4サイクル技術部
部長 酒井 能成様(右)
主事 福島 道雄様(左)

―― 現在、携わっておられる製品・お仕事について教えてください。


福島さん:私は2009年に中途入社で転職してきました。前職では電機メーカーで大型空調のガスエンジン、ガスヒートポンプの設計をしていました。同じ分野の製品でしたが、業界が違っており、考え方や文化、設計の仕方が全然違っていました。具体的に言えば、前職では年間9000台ほどでしたが量産品をつくっていました。量産品で次々とバージョンアップする機種を主・副の2名で担当。設計してから実験・性能部隊へ引き継ぐのですが、その実験にも自分たちが立ち会って性能を確認していました。
一方当社のガスエンジン開発では、検討に手を掛ける量も時間も違います。また、パーツごとに担当が分かれており、一つのエンジンをチーム全員で作り上げていきます。

酒井さん:開発は5チーム位に分かれますが、それぞれのチームの個々人に設計のパーツが与えられます。大型のエンジンの初号機では時間をかけて作っていきます。2017年に完成した新機種は2004年から構想開発がスタート。最後の2年間で追い込みをかけて完成させたので、開発期間は実質3年位でした。

福島さん:私は現在、既存エンジンのお客様対応が主な業務ですが、今後は新機種の性能をアップさせるための要素部品の設計開発にシフトしていくことになります。 2009年3月からこの仕事に取り組んできましたが、慣れてきたのは4~5年目位からですね。技術的に難しいというより、現場に行かないとエンジンを見ることができない。モノが大きいので触る機会もないので、現場に行き、その現場での経験を4~5年繰り返して、今やっと機械が分かってきました。

酒井さん:私たちの仕事は設計ですが、自分ひとりで要素技術を開発するのではなく、どちらかと言えばコーディネーターの役割を担います。設計の技術知識も必要ですが、その知識をベースにいろんな提携先とタイアップしながらものを作りこんでいきます。現場に出て実際に物事がこうなっているから、その現象がこういう理由で起きているといったことを当社の技術開発本部と協議をしながら理解を深めていくのです。シミュレーション解析を行い、それが合致した要素になっているのかは実機で確認しています。

福島さん:シミュレーション解析では人間が条件を与えており、その前提条件が実際には変わってくるので、計算も変わっていきます。内燃機関の燃焼状態は特異な状況であり、振動などの複雑な条件が重なり合うため、現象を正確にとらえるためには解析するだけでは分からないのです。

酒井さん:例えば、性能アップのための個々の要素技術を組み合わせたらどうなるのか。足し算になるのか、掛け算になるのか、もしかしたら引き算になるかもしれない。そういうところは実験で確認します。 開発設備としてこの工場で実機モデルの試験機を一台持っています。そのエンジンで様々なテストを行います。それに加えて、単筒試験機という1シリンダーのエンジンがあります。そのエンジンを活用して要素技術を開発し、ほぼそれが第一段階の確認実験となっています。その後、複数シリンダの実機試験機へ新規開発部品を組み込んで試験をし、求める性能が得られるかを確認します。 また、設計は発電設備を運用するオペレーターやプラントを建設したエンジニアリング会社などのお客様と打ち合わせをする場面も数多くあります。その中から、お客様の要求を吸い上げてくるのも設計の仕事です。



―― 御社で製品開発に携わる技術者のやりがいは何でしょうか。


福島さん:設計が現場に行くのは、問題が起こった時なので、お客様から「ありがとう」と言われることは、正直あまり多くありません。ですが、トラブルに懸命に対応して、その後でお客様から、次の発注や相談を頂けた時には一定の評価をして頂けたことを感じられて嬉しいです。 また、バラバラのエンジンを現場で立ち上げて、最初に起動するときはドキドキします。機関室にいるのですが、エンジンが最初に回り始める音が聞こえて、発電を始めた時は、それまでの準備のことを思い出して、結構グッときます。
他にも、昔の納品したエンジンに問題が起きて現場に行く際に、こちらはエンジンの設計なので何でも知っているつもりで行くのですが、現場にはメンテナンス会社の技術者で20~30年エンジンをずっと見てきた人がおられます。その方たちの鋭い質問が的を射ているのです。教科書に書かれているような答えを並べても通用しません。その人たちは感覚で分かっているのです。それを数字で出せと言われても正確な数字を出すのは非常に難しい。そういう風に実際にエンジンを何十年も触っている人たちと話をして、その感覚を理論につなげていく作業がとても面白いですね。 メンテナンス会社の中でも大型のエンジンを触れるのはある特定の人たちです。下手な人が触ると数億の損害となるようなレベルの問題が起きてしまうからです。 そんな仕事をずっと任されている人たち、そういう人たちと話をする機会がある。そうした現場の目線と、一方で設計などの理論の目線で両方を見て、答えが合致することがあるのがこの仕事の一番面白いところです。感覚を数値に変えると「なるほど!」と思うことが多いです。

酒井さん:それはフィールドで得られた現象を理解すること自身が実力向上になっていく。それを新規開発に応用するということで、まぁいつまでも勉強ですね。

福島さん:そうですね。60歳を過ぎて引退された大先輩も言ってました。「会社のお金を使って勉強できるんだからいいよね」と。トラブルが起こった時も「新しい発見ができるという思いで現場に向かえばいい」そういう精神で育てられました。

酒井さん:私は1991年に入社して27年目になります。長いですね(笑)。でも、勉強することは尽きないです。私の経歴はライセンス製品から始まり、今の担当は自社開発のガスエンジン。ライセンサーがいないから大変なこともありますが、逆にすべてを自分でコントロールできるのが仕事の醍醐味。今はより高い技術を実現しようとみんなで切磋琢磨しています。 2007年にガスエンジンを自社開発しましたが、この時はゼロからで構造体の設計から始めました。今は骨格がだいたいできていますが、マイナーチェンジをしないといけないことがたくさんあり、そこの細かいところの修正技術を磨いて、改良設計に力点を置いています。 例えば、お客様にとっては、エンジンの運営コストの8割が燃料代。燃費を1%下げることは大きなメリットになりますからね。


―― お仕事で大変と感じられることは何でしょうか。


酒井さん:それは大きなトラブルが起きた時です。電力会社様との仕事もあるので、大きなトラブルは技術だけの話で終わりません。

福島さん:私は電力会社様に納めているライセンスもののディーゼルエンジンも担当しているので、自社開発のガスエンジンとは違い、お客様とライセンサーの間に立ちます。何かトラブルが起こった時に、ライセンスものだから知らないというスタンスは取れません。あくまでもお客様は川崎重工から購入しているからです。だから、自分で現象を考えてお客様に説明し、ライセンサーには自分の考えを技術的に話します。お客様とライセンサー両方に納得してもらいながら、良い方向に向かうようにします。ドイツやフランスにも出向き、いろんな人の考えを聞くことが、私にはすごく勉強になりました。

酒井さん:福島は前職とはまったく違う仕事内容で最初は面食らったと言っていました。いろんな苦労を重ねて、この分野では第一人者になりました。お客様の話とライセンサーの話の間を取り持つことのできる大きな存在になっています。そんな存在になった時に自分の地盤が固まったのだと思います。 当部門の約半数が中途採用の技術者でみんなが自分の得意分野を持っています。当部門では中途採用者が自分の地盤を持てる仕事フィールドを用意できます。 ガスエンジンのベンダーは欧米に多く、スタッフには何かあればすぐに出かけて良いと言っています。特に立ち上げの際はどこに課題があって、こういう風に動きましょうという合意を取らないといけないので必ずFace to faceで話をします。その後のフォローアップ会議は電話会議で行いますが、海外に行く機会が多いので、海外でのビジネスに興味のある方には面白いと思います。


とても仲の良いお2人
ロゴの前にて


―― 電力会社様との取引など、扱われている製品の規模が大きいため、お仕事が社会貢献に繋がっていますよね。


酒井さん:大震災以来、国内電力システムの改変が注目されています。特に震災直後は電力供給が不足し、その時に大型発電所の立ち上げる話があって、官民挙げて歓迎の声が上がりました。また、ガスエンジンは太陽光発電など再生可能エネルギーのバックアップとしての用途でも広く使われ始めています。さらにガスエンジンは非常に効率が良いため工場などの自家用発電にもかなり利用されるなど社会貢献度の高い製品だと考えています。


―― 競合他社も同様の製品を開発している中で、御社の製品が選ばれている理由は何でしょうか。


酒井さん:発電効率につきます。2007年の開発当時、試験結果で出した数値がカタログ値となり、そのクラスでは世界最高の発電効率となり、営業戦略上も大きなアピールポイントとなって受注獲得につながりました。 今はその性能をさらに高めて、大きく飛躍しようとしている時期です。


―― これまでのお仕事に対する姿勢で、これが活きたと思うことはございますか。


福島さん:転職する時に、それまでの自分のキャリアを捨てる覚悟で入社しました。ゼロから何でもしますというつもりでした。例えば、前職では3Dで設計していましたが、当社には当時2次元のCADしかありませんでした。その時に私の3Dのスキル活用は消えましたが、そこにしがみついていても仕方がない。ここで生き抜いていかないといけないですから。初めからキャリアを捨てる覚悟で転職を自分で決めたことが役に立ちました。スキルはあきらめずに取り組めば身につきますから。

酒井さん:私から見ると、福島の人間力の高さ、コミュニケーション能力や実行力などが、当社で活躍できる要因だと思いますね。


―― どのような方と働きたいと思われますか。


酒井さん:目の前の課題を単なる業務として見るのか、パッケージの仕事として見るのか。一緒に働きたいと思うのは、例えば、課題があった時に、その課題の奥底にある「何故それが課題となっているのか」を考えて、決着させられる人です。単なる業務としてではなく課題の周りに何が潜んでいて、どうすれば決着できるのかを自ら考えて動ける人材です。新しい装置を作るとして、作ることが目的ではない。私たちはビジネスをしているので、市場投入するためにはどんなプロセスで開発を進めればいいのかを考えられる力を持った方に期待しています。 2017年4月からエネルギー本部として発足し、会社からの期待も大きくなっています。この事業が軌道に乗ったのは、会社全体のバックアップがあり、研究開発への投資や人材面でも力を入れているからです。ですから、会社の高い期待が集まる体制の中で有意義な仕事に取り組めると思います。


―― 職場はどのような雰囲気なのでしょうか。


福島さん:今の部門はすごくやりやすいです。酒井部長は部長だからと線を引くタイプではないので、雑談をすることも多いですね。

酒井さん:職場は結構うるさいと言われています。思い立つととみんなすぐに話をしにくるので職場では結構議論が盛んです。明石にある技術開発本部とも頻繁に行き来しています。

福島さん:普段は忙しくてなかなか飲みに行けないのですが、現場や海外出張の時には開発部門以外の方とも一緒に業務に取り組むことが多いのでので、皆でよく行きます。


―― 今後の目標について教えてください。


酒井さん:この新部門にはまだまだ製品のラインナップが少ないと考えています。この事業をさらに軌道に乗せていくには製品群を増やしていかなければなりません。それを可能にする開発体制を確立することが私の目下の目標です。

福島さん:新部門の力になること。それから設計技術者として、モノを見ながらさらに勉強を積み重ね、私の大先輩のように60歳を過ぎてもなおまだまだ勉強がしたいと言えるようになりたいですね。


―― 本日は、貴重なお時間をいただきまして、ありがとうございました。